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2016年10月20日

全員経営 自律分散型イノベーション企業⑮~挑戦することで社会を掴む

前回、「町工場の巨人」と呼ばれる三鷹光器を紹介しました。元々望遠鏡の製作が会社の原点で、今でも社員は、必ず望遠鏡作りをしっかりと仕込まれます。そのうえで光学だけでなく、電気、機械、筐体(きょうたい)をつくるための板金・・・と幅広く経験を積み、一人最低三つ以上の得意な仕事を持つことが求められます。

さらには、開発設計製造にとどまらず、顧客との営業打合せ納品調整、そして修理までも開発した本人が担当します。三鷹光器のいう“仕掛け”とはアイデアの組み合わせであり、複数の仕事をこなせることでアイデアが生まれやすくなり、修理にこそ次なるニーズが現れ、「アイデアの宝庫」になるからです。

こうして縦横に多様な経験を積むなかで、独自の仕掛けが生み出されていく。コンピュータ万能の時代にあって、コンピュータに頼らず動かすものが多いのも一つの特徴です。
今回も引き続き、三鷹光器について「全員経営~自律分散イノベーション企業成功の本質」(野中郁次郎・勝見明著:日本経済新聞出版社)から内容を要約して紹介していきます。

ちなみに前回までの主な記事はコチラです。
①プロローグ
②クロネコヤマトの挑戦
④釜石の奇跡
⑧ホンダミライースの開発
⑩高松丸亀商店街の復活
⑫テラモーターズの機動力
⑭三鷹光器の社員成長力
です。

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三鷹光器では、一人前の職人になると今度は新しいこと課題に取り組んでいきます。そこでの独自の仕掛けの例を紹介します。

< 宇宙技術を産業用検査機器に応用 >

発端はある半導体メーカーから「半導体の良品/不良品 を簡単に見分けられるようにならないか」と相談を受けたことだった。半導体の回路は現在、ナノ(10億分の1)メートル単位で製造されている。それだけ微細な回路になってくると、良品/不良品を見分けるのは至難のこと。

半導体メーカーは従来手法の延長線上に解決策を見出せなかったが、三鷹光器は「新星を発見するために使う手法を応用してはどうか」と考えた。
天文の分野では新星を発見するため、何年か前の写真と最新の写真を1秒間に25コマで1つのスクリーンに交互に映し出して比較。最新の写真側を赤色の照明で光らせると、同じ場所に位置する星の像は静止した状態で見えるが、新星が発見されると12.5コマで赤色の点滅が見える。この技術を半導体の超LSIの集積回路の欠陥を探し出す測定装置に採用した。

つまり、集積回路のマスターパターンと製造したパターンを、交互に1つのスクリーンに映し出し、製造パターンを通過する光学系に赤色のフィルターを入れ25コマ以上で交互に映すと、製造パターンに断線やショートしている部分があると、赤色で点滅表示があり、欠陥個所が確認できる、という装置を作り上げたモノづくり、モノがたりより】

昔から間違い探しでは、双方を重ねて見ることで、発見しやすくする手法があり、その点では「なるほど」と皆さんも納得できるでしょう。判断を丸ごとコンピュータに任せて、利用者にとってブラックボックスにするのではなく、ヒトの判断の道具にしている。仕掛けが分かる分、ヒトの感性や追求力を刺激するモノになっています。ある幹部が言います。

「そこそこの製品を作り、あとはコンピュータやセンサーでデジタル処理するほうが早いかもしれません。しかし、手術用顕微鏡にしても、医者にとっての本当の使いやすさは手の感触でわかるものです。それは重力という自然の力を上手く利用して誠実に作ることが大切で、コンピュータではそこまで制御できません。」

頭で行う判断というより、もはや感覚を基準にする領域に到達しているようです。ヒトが使う機器だからこそ、ヒトの感覚を重視している。
一方その幹部は、納品先の大手企業に行くと「自分は何をやっているのか、良く分からない」と話す人が多いのに驚かされるらしい。

「製品の1部品の設計だけで200人もいて、自分はそのごく一部を担当するにすぎない。他業種になると全然分からない。うちでは一人で全てをこなし、天文学の応用でいろんな挑戦ができる。この違いです。」

かつて私権圧力が高かった頃、大企業では企業内での派閥闘争の圧力が強く、そのことが組織内を活性化させていた。しかし私権圧力は衰弱すると、企業内派閥闘争も衰弱し、大きな組織内の社員は組織に守られるだけの存在に成り下がってしまった。

つまり創造性ある自律した社員を育成するには、顧客や社会からの圧力をいかに社員がダイレクトで感じられるかが、重要なのです。そしてそこからさらに高みに臨むためには、挑戦すること。なぜなら新しいことに挑戦するためには、他社が未だ捉えていない時代の潮流の萌芽を看取することが不可欠だからです。
あなたは今の仕事の中で何か新しいことに挑戦していますか

 

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