2014年06月16日
第3回次世代戦略研究会「市場とは?お金とは何か?」その3
皆さん、こんにちは
前回につづき、第3回次世代戦略研究会「市場とは?お金とは何か?」の議論のレポートをお届けします
前回は、外圧=内圧、国家と市場という切り口で市場拡大の原動力について理解を深めましたが、そこで固定化されたのは「市場拡大は原資の拡大である」という点です。借金をしてまでも経済成長を維持する国家はなぜそこまで市場拡大に拘るのか。いよいよ、その市場そのものに迫っていきます。
■第一部 市場の起源を探る
2.市場の起源とは?
前回同様、様々な意見がでましたので、要旨をまとめる感じで書いていきたいと思います
○市場の取引は何から始まった?
まずは議長から「市場の取引の始まりは何だったのか」率直に思うことを述べて欲しいという問いからスタート。そこで展開された内容は以下のような感じ。
・米と衣服などの物々交換かと思うが、物の価値を決める軸がない状況では等価交換は成立するか怪しい。物々交換は一定の条件が揃った上(例えば都市が成立してから)で初めて成立するもの。それ以前、例えば1万年前ではどうか。・教科書的には黒曜石、翡翠など、装飾としての希少価値があるものの取引だと言われている。時は、弓矢の発明があり、生産力が拡大し、各集団間の縄張りの緊張圧力が生起している時代。そうした中で緊張緩和の為に部族の最も大事なもの、希少価値のあるものを送りあったのではないかと考える方が自然。つまり、市場の取引の起源は贈与だったのではないか。
・この頃の集団は自給自足ができるようになった集団。余剰生産力がない中で、よその集団との取り引きを前提とした生産依存関係は存続可能性が低い。やはり、集団間の友好関係を築く為にされたのが贈与であり、市場の起源であろう。
う~ん、今までの歴史認識が逆転して見えてきますね学校で習ってきた歴史を思い返すと、黒曜石など希少岩石と食料や衣料を交換し合っていたのが取引の始まりのように思ってましたが、自給自足もままならない集団が生活必需品を取引するのは危険極まりないし(取引ができなければ自集団が滅びる危険を孕むことになる)、部族間戦争が起こりそうな状況下で戦争でなく友好関係を築こうするのは人間として納得がいく気がします
しかし、この取引は現在の取引とは異なります。何が違うかと言えば、そこに経済が伴わないという点です。現在の市場経済までどのように遷っていくのか、次はその点に焦点を当てて議題が展開されました。
○市場経済が始まったのはいつなのか?
まずは議長より人類史6000年前の状況を確認しながら議論スタート。
共通認識として、部族の移動図と植生の推移図を下に、以下を確認していきました
①約200万年前、地球の寒冷化によって地球全体が乾燥化し始める。急速な乾燥によってアフリカ東部・北部で森林がほぼ消滅→生存圧力上昇から人類がアフリカから移動開始。②約3万~2万年前のユーラシア大陸の植生では中国の中心部のみが砂漠・半乾燥地帯であったのが、約5000年前になると中国の中部~イラン高原~サウジアラビア~アフリカ北部が砂漠・半乾燥地帯となる。
③それに応じ、肥沃な地域であるインド北部(インダス文明)やモンゴル高原(後の清帝国)、あるいは、ヨーロッパ(後のギリシャ・ローマ帝国)へ移動。
その中で出てきた意見をまとめると以下のような感じ。
・こうした環境下では自集団の自給自足ができるかが生存できるかに直結する。肥沃な土地が移動していくと共に、集団も大きくなる中、生起したのが、略奪という手法。この略奪によって勝った部族に富みが集約されていくことになる。その余剰資源が原資となっていった。・緊張緩和の為に贈与をしていた時代と異なり、トルコのハットゥシャの城壁都市に見るような他部族を警戒するような意識に変わっていった。
・最大の略奪目的となったのは、肥沃な土地、領土。その土地でより大きな生産力を得ることができる。
こうして贈与から始まった市場が、略奪によって市場経済に遷っていく流れが整理されました。それまで贈与によってどうにか集団間圧力を押さえていた我々人類は、集団が大きくなるにつれて生産力(土地の拡張、技術向上、等により)を向上させていければ集団を維持できるはずです。そうならず、贈与から略奪に移行したのは何か集団間関係を抜本的に変える契機があったはずで、その契機が自然の変化だったというのは腑に落ちる感覚がありました。
さて、略奪を契機とした市場経済ですが、それによって古代の集団はどのように変化を迎えたのか。次はそこに焦点を当てて展開していきます。次回の「古代市場の誕生」をお楽しみに。
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- posted by kawai at : 20:38 | コメント (0件) | トラックバック (1)