前回はセミラティス構造の町並みを作り再生した「高松丸亀町商店街」を紹介しました。 今回も「全員経営~自律分散イノベーション企業成功の本質」(野中郁次郎・勝見明著:日本経済新聞出版社)をベースにして、今度は組織体制のセミラティス構造をみていきます。
ちなみに前回までの記事はコチラ
・①プロローグ
・②ヤマトは我なり~クロネコヤマトの挑戦
・③ヤマトは我なり~バスとの連携
・④釜石の奇跡~Ⅰ防災教育
・⑤釜石の奇跡~Ⅱ姿勢の防災教育
・⑥釜石の奇跡~Ⅲ「率先避難者たれ」の意図
・⑦釜石の奇跡~Ⅳ故郷を大切に想う心が皆の命を助けた
・⑧企業内特区が既成概念を突破する
・⑨非ツリー型組織に可能性あり
・⑩時代にかみ合うために古い規制や固定観念を取り払う
丸亀商店街では、パブリック空間とプライベート空間の中間として、曖昧なセミパブリック空間が作り出す居心地の良さにより、これまでとは違う賑わいを生み出したのです。
逆に言えば、利用者を限定した空間では、それ以外の人たちを受け入れない、居心地の悪い環境になり、気軽に立ち寄り新しい交流が生まれにくい傾向にあります。
同じことは企業の組織のあり方についても当てはまります。
ツリー構造の代表は、効率性や安全性を追求するために作られた官僚制階層組織です。
上下関係によって階層的に秩序づけられたヒエラルキーの世界で、そこでは個人は単一の集合に属し、機能や課業は分業化され、細分化されます。単一の集合で単一の機能や課業を担うと、ある意味プロフェッショナルになることができますが、思考の枠を限定され、下手をすると全ての思考がその枠に閉じ込められてしまう危険性があります。
昨今の官僚の暴走は、まさに民意を顧みないのはその典型でしょう。
一方、以前ご紹介したダイハツミライースのプロジェクトチームはどうだったでしょうか?
ミライースのプロジェクトチームは、社内バーチャルカンパニーとして、階層性が圧縮され、スピーディにビジョンや目標が共有される一つの場が生まれました。そこでは細分化された機能や課業を分担するのではなく、主業務を分担しながら現実を共有し、お互いにフォローし合う関係でした。
さらに各メンバーは出身部署にいるミライース担当グループのリーダーも兼務するなど、幾つもの役割が重なり合っています。
では、なぜ幾つもの役割や要素が重なり合う方が創造性を期待できるのでしょうか?
それは、創造はゼロから生まれるものではなく、これまで無関係だったもの同士がつながる事で生まれることが多いからです。
複数の役割を持つことは、複数の視座を持つこと。これにより自ずと思考が一つの枠から解放され、様々な着眼点を持つことができます。
さらに組織の中で認知された役割なので、それを実行するための組織の力を活用できる。
つまり視点の豊かさで目標を達成するルートを素早く見つけ出し、それを結びつけることで、目標達成につながる可能性が高まるのです。 それがタスクフォース型の事業体制が注目される理由なのです。
今後のビジネスは、効率的に業務を推進するためのツリー構造と、創造性を発揮する為のセミラティス構造の両輪で進めていくことが不可欠になってくるのです。